限りなく近い0(ゼロ)

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利治「だなあ・・・」 俊介「どうすんだよ?」 利治「なあ、俊介の名義で、銀行から借りれないかな?」 俊介「俺バイトだぞ、フリーターに金貸してくれっかよ、しかも五百万円なんて・・・」 俺の言葉を聞いた瞬間、親父は背もたれにうな垂れた。 悪かったな、期待に応えられなくて、 利治「そうだよなあ・・・」 俊介「俺も金ねえぞ、涼香も専門行ってるから金なんて考えてないだろうし・・・」 利治「いっそ、自己破産でもするかな、そうすれば借金もなくなるし、」 俊介「じゃあ、住む場所はどう住んだよ?」 利治「うん・・・」 俊介「俺とか、涼香はどうやって生きたらいいんだよ?」 利治「あと、直哉も心配だしな、」 俊介「あいつは、どうだっていいよ、ろくに学校出てねえのに、家でプラプラして、自由に出かけてさ、」 利治「おい、兄弟だろ・・・少しは気配りしろよ、」 俊介「よく言うよ、今だって、俺が渡した二万円そのまま直哉に渡したじゃねーか、」 玄関から扉を閉める音が聞こえた。俺は一瞬、直哉がまだいたのかと思った。 玄関を見つめていると、妹の涼香が姿を現した。 俺はホッと、一息ついた。 涼香「ただいまー、」 涼香は今までの暗い会話をかき消すように、明るい声で中に入ってきた。俺はわかっている、その明るい声と表情も、親父の話を聞けば凍りつくことを。 涼香「何、どうしたの?」 涼香の問いに、親父は小さく頷いて、俺の時とまったく同じ報告を始めた。 たいした時間は経ってないが、とても長く感じた。親父の話を聞くに連れて、涼香は顔を強張らせた。親父が会話の一節を終えるたびに涼香は、うそ・・・、何で・・・、と言葉を返していた。 利治「というわけで、涼香、お前の名義で、銀行から借りてほしいんだが、」 俊介「こいつまだ未成年だぞ、金借りれっかよ、」 利治「でも、涼香は学生だから、ほら、学生ローンとかあるし、」 俊介「それ銀行じゃねーだろ、」 涼香「やめてよ!勝手に決めないで、例え借りれたとしても私は借りる気は無いからね、」 俊介「それにどう考えても五百万は無理だよな、」 利治「何だよ、二人共協力する気あるのか?」 俊介「ねえよッ!」 涼香「なしっ!」 親父は、あー、と言いながら頭を抱え始めた。 涼香「ねえ父さん、直哉さあ、そろそろ言った方がいいよ」 利治「そろそろって、何を?」
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