限りなく近い0(ゼロ)

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あれから一週間は過ぎた、直哉の遺骨は、今のところ食卓の隣に台を作って、そこに置いている。 家族で病院に着いたとき、直哉はすでに息を引き取っていた。 涼香は顔を覆い隠し、親父は警察から話を聞いていた。 警察の話では、直哉は団地の近くにある公園で倒れてたらしい。階段の真下で発見されたこともあって、事故という結論になった。 直哉は、最後はどんな感じだったのだろう。 公園で倒れたとき、まだ、死にたくないと思ったのか。 それとも、もういいや、とでも思ったのか。 病院に着いてから、今この瞬間までは流れるように過ぎていった。 親戚に連絡、葬儀の手配、葬儀、火葬、葬儀に来てくれた人達への挨拶、何もかもがあっという間に過ぎていった。 この日は、丁度涼香と俺が休みだったので、三人で昼飯を食べていた。 涼香と親父はショックを受けていたようだが、何とか落ち着きを取り戻していた。 涼香「ねえ、そういえば、直哉の部屋も片付けないとね・・・」 利治「そうだな、ここも引き払わないといけないしな、」 俊介「今思ったんだけど、誰か、あいつの部屋に入ったことある?」 二人は一瞬、箸を止め、首をゆっくり横に振った。 俊介「そうか、あいつ、生き物と飼ってないよな・・・」 俺たち三人は、それぞれ部屋を持っていた。薄い壁だが、空間は完璧に遮断されている。 涼香は箸を置き、恐る恐る、直哉の部屋に近づいた。 襖の前に立つと、涼香は自分の耳をドアに押し当てた。 涼香「・・・音はしてない。」 俺と親父も箸を置き、直哉の部屋の前に立った。 親父は襖のくぼみに手を掛け、静かに動かした。隙間からは、暗闇が縦筋となって現れた。 次の瞬間、親父は勢い良く襖を開けた。 中は真っ暗だったが、親父はその暗闇に入って行き、真ん中の電灯の紐をカチャンっと引っ張った。特に変な臭いはしない。 輪型の蛍光灯が、まばたきの様に点きはじめ、やがて部屋の全体を照らし出した。 涼香「な、なんじゃ、こりゃあ!」 部屋の真ん中には、直哉の布団が綺麗に敷いてあった。 その周囲、両壁、カーテンを閉めた窓には木の棚が並べられ、棚には、上段がキャラクターフィギュア、中段にはガラスのケースに入ったミニカー、下段にはいつの時代に出版されたかわからない少年誌が並べられていた。 俊介「すげえ、ある意味、」
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