限りなく近い0(ゼロ)

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その時、不意に玄関のチャイムが鳴った。 玄関まで行くと、友達の大谷が玄関の前に立っていた。 大谷はこの前、旅行を断った仲間の一人で、特に仲のいい親友だ。 直哉の葬儀には参列できなかったが、日を改めて挨拶に来てくれた。 俺はドアを開けて、大谷を玄関に入れた。普段テンションの高い大谷も、今日はさすがに引きつった表情をしている。 大谷「しばらくぶり、元気か?」 俊介「タニ、悪いな、来てもらって、」 大谷「俊介が誘い断るなんて滅多にないからさ、そしたら、弟さん大変なことになってたし、」 気が付くと、少しタイミング遅れて、親父と涼香が玄関まで来ていた。 大谷「あ、どうも、この度は、突然の事で、」 利治「こちらこそ、わざわざお越しいただきありがとうございます。」 涼香「ありがとうございます、」 大谷と俺らは、玄関で何度もお辞儀を返していた。 大谷「あの、俺でも何か出来ることがあれば、」 俺と涼香と親父は顔を見合わせた。 ・・・あれをやってもらうか、 俺は、大谷を家にあげて、直哉の部屋に案内した。 大谷は、直哉の部屋を見た瞬間、口を開けたまま、微動だにしなかった。 利治「すいませんねぇ、遺品整理をしようと思ったらこんな状態で、」 大谷「こ、これは、」 利治「それで、できればですね、完全燃焼できるゴミと、不完全燃焼のゴミで分けていただければ・・・」 大谷「これ、全部捨てる気ですか?」 利治「分別、やっぱり難しいですかね・・・」 大谷「どんでもない!こんな宝の山!捨てちゃ駄目ですよ!」 俊介「ん?どういうこと?」 大谷は顔を上下に揺らしながら、早く言わねばと、口をパクパクしていた。 それを見ていた涼香が、顔を曇らせながら大谷から遠ざかっていた。 大谷「た、例えば、あの棚に鎮座している、『魔法使いキューティー』のヒロイン「ネネ」、あれは初回限定デザインで、その手のショップで売れば、恐らく五万はくだらないかと・・・」 「五万」というワードを聞いた瞬間、涼香が俺と親父の間を割り込むように大谷に近づいた。 涼香「五万、今五万て、言いましたよね・・・」 大谷「あと、あの棚の下にある雑誌『少年ヤングボーイ』、これもとっくに廃刊になってるので、これまた貴重品かと・・・」 俺達三人はまた、顔を見合わせた。 大谷の言葉に、どれほどの信憑性があるか分からないけど、可能性とすれば、これしかないと思った。
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