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「リオタ充に、俺はなる!」
オタクの聖地、秋葉原。
マルコマルオがいた。
マルコマルオは、樽のように丸々としている。
土曜の秋葉原は、人がごった返す。
人の流れを滞留させるのは、道の左右に配置された、メイド喫茶のビラを配る猫耳の少女など。
風俗店の客引きだと揶揄する人も居る。
いや、単なる客引きのバイトにすぎない。
メイドやら、忍者やら、女子校正やらの格好をしているが、正直な所、大変申し訳ないが、そこに魂はこもっていない。
「仕事として、お金の為にやっています」オーラがにじみ出ているので、萌えとかそういう以前の問題では、実はある。
もちろん、本気で取り組んでいる人が居ることは否定しない。遭遇率の問題だ。
人混みを、かわす。
ささっ!
さささっ!
見事な足さばき。
――機敏。
人としてはサイズが大きいはずではあるが、人と人の隙間を点として、その複数の点を折れ線で繋ぐように、膝ではなく、足首を使った小さなステップ。
デブゴン、芋洗坂係長の他にも、いたのだ。
「動けるデブ」が。
向こうから、カップル連れが歩いてきた。
女性側が、男性側の服の肘あたりをつまんだ状態で、無駄に横に広がっている。
秋葉原にも、いわゆる「リア充」は存在する。
――衝撃。
――心に。
マルコマルオは、「彼女」という装備は、あいにく持ち合わせていない。
その装備状態で、オタクの道を進むには、それなりの耐性……あるいは、忍耐も必要になる。
そして、マルコマルオは、そのカップル連れもかわし、とある家電量販店へと、小走りに向かっている。
――行列。
――電光石火。
彼の前には数人の男性。
彼の後ろにも、続々と人が並んでいった。
今日は、とあるネトゲのフライングゲット日。
オノデン坊やのような見た目。
にこやかな糸目、ほわっとした雰囲気。
ジーンズに、ユニクロ……ではサイズが足りない為、「大きいサイズ」専門店で手に入れたシャツ。
そして、巨漢なのに、いい匂いがする。
フレグランス装置でも、内蔵されているのだろうか?
それが――マルコマルオであった。
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