「リオタ充に、俺はなる!」

1/5
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ

「リオタ充に、俺はなる!」

 オタクの聖地、秋葉原。  マルコマルオがいた。  マルコマルオは、樽のように丸々としている。  土曜の秋葉原は、人がごった返す。    人の流れを滞留させるのは、道の左右に配置された、メイド喫茶のビラを配る猫耳の少女など。  風俗店の客引きだと揶揄する人も居る。  いや、単なる客引きのバイトにすぎない。  メイドやら、忍者やら、女子校正やらの格好をしているが、正直な所、大変申し訳ないが、そこに魂はこもっていない。 「仕事として、お金の為にやっています」オーラがにじみ出ているので、萌えとかそういう以前の問題では、実はある。  もちろん、本気で取り組んでいる人が居ることは否定しない。遭遇率の問題だ。   人混みを、かわす。  ささっ!  さささっ!  見事な足さばき。  ――機敏。  人としてはサイズが大きいはずではあるが、人と人の隙間を点として、その複数の点を折れ線で繋ぐように、膝ではなく、足首を使った小さなステップ。  デブゴン、芋洗坂係長の他にも、いたのだ。 「動けるデブ」が。  向こうから、カップル連れが歩いてきた。  女性側が、男性側の服の肘あたりをつまんだ状態で、無駄に横に広がっている。  秋葉原にも、いわゆる「リア充」は存在する。  ――衝撃。  ――心に。  マルコマルオは、「彼女」という装備は、あいにく持ち合わせていない。  その装備状態で、オタクの道を進むには、それなりの耐性……あるいは、忍耐も必要になる。  そして、マルコマルオは、そのカップル連れもかわし、とある家電量販店へと、小走りに向かっている。  ――行列。  ――電光石火。  彼の前には数人の男性。  彼の後ろにも、続々と人が並んでいった。  今日は、とあるネトゲのフライングゲット日。  オノデン坊やのような見た目。  にこやかな糸目、ほわっとした雰囲気。  ジーンズに、ユニクロ……ではサイズが足りない為、「大きいサイズ」専門店で手に入れたシャツ。  そして、巨漢なのに、いい匂いがする。  フレグランス装置でも、内蔵されているのだろうか?  それが――マルコマルオであった。  ◆
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!