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まるで駄々をこねる子供のよう。ねぇ、ねぇ、ねぇ、待ってって、待ってってば!
「るう―――」
「おねえちゃ、」
「わたしの、せいで苦労かけたの、ごめんね。でもね、わたし、あなたを拾ったの、後悔したことないから。ええ、今この瞬間、胸を張っていうわ。わたしは、あなたと出会えて良かったわ」
あなたは。
鉄サビにまみれた汚いアンドロイドを拾って。
アンドロイドのせいで死ぬことが決まって。
後悔もしてないなんて、言うの。
「わたしの妹は死んだけど。ええ、そう、わたしの妹は死んだ。あの日、雨の日に死んだの。今まで身代わりにして、ごめんね。あの日からずっとおかしかったね、わたし。ごめんね。いいおねえちゃんにも、いい持ち主にもなれなかったね。ごめんね、ごめんね、」
「もういいかい」
男が姉に――わたしの、捨てられたアンドロイドの、持ち主に、渡された、銃を指さす。
「……きっとこれが、わたしがあなたに出来る最後の、愛情、でしょう」
銃の安全装置を外した姉は、両手で銃を握りしめる。そして、いまだ惨めに地面に這いつくばって、雨に濡れているわたしに、まっすぐ銃口を向けた。かたん、と姉の傘が地面に落ちた。
「さようなら、るう。優しいアンドロイド。わたしの妹。もう永遠に会えないよ。今までありがとう。あいしてるわ」
「わたしの、鋼の、愛を受け取って!」
「もちろんよ、るう!」
アンドロイド一体につき、ひとつ付いている、小さな爆弾を、わたしの姉に投げつける。アンドロイドか誘拐されて、その持ち主の情報を流してしまった事件が起きて以来、全てのアンドロイドに渡されているボタンくらいの大きさしかない小さな爆弾。わたしはそれを、わたしの持ち主に対して、機械特有の正確さで投げつける。
ばん、と強い衝撃。視界が赤いエラーという文字で埋め尽くされる。頭を撃たれたようだった。鉄錆びていく、鉄錆びていく、鉄錆びていく!爆発音がした。わたしも姉も、これで最期!
もう、永遠に、会えないわ―――
さようなら、わたしの愛しい、おねえちゃん。
鉄の雨が降っている。姉はもう傘をわたしに差し出さないし、わたしに雨を避ける理由はもうない。
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