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倒れた男を踏み台にし、船のへりに飛び乗った。
その時、足元に揺れる波の間から、女の顔が見えた。
「カリュプソー……」
あれはニンフだ。
血を求めるニンフ。
この海には相応しくないプラチナブロンドの髪を波間に漂わせている。
そのまま女は波の底に沈んでいった。
俺は向かいの船に乗り込まず、甲板に戻った。
「オヤジ、この船は沈める」
そう告げた。
「あんたの墓場だ」
「バルトロメオ……」
驚愕した青い目。
「あんたの秘密を思い出しちまった」
瞳孔が開き、恐怖の色に染まる。
「海の男は死を怖れるな」
オヤジの口にピストルをぶち込んだ。
「アディオス」
――ドン!
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