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貴族も兵士も全て海に投げ込んだ。
これが俺の故郷の船かも知れないのにだ。
『それでいいのよ。私の息子……』
ニンフの声が聴こえる。
俺は思い出していた。
幼い記憶の中で、母が耳もとで囁いた言葉を。
――すべて海に沈めなさい。
秘密は何もかも海が隠してくれるわ。
船を動かすのに必要な船乗りは手下にする。
こんな航路に乗り込む船乗りなんてのは、仕事の無い荒くれどもばかり。
かしらが誰であろうと、キャプテンの名が変わろうと、食っていければいいのだ。
一人ずつ選んで焼き鏝で手の甲に印をつける。
「うぅっ!」
唸るぐらいなら許してやろう。
大声で喚く奴など、俺の船には必要ない。
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