記憶

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記憶

 浅瀬が続く島のほとんどが白い砂浜。  洞窟の上には南国の木々が生い茂る。  砂浜に立ち、時間の動かない海を眺めた。  ――地に足がつく。  その方が生きている実感がする。  揺れる海での生活はまるで死の国の入り口で抗っているようだ。    オヤジが俺の父親でないことは俺だってわかっていた。  だから古い手下どもは俺を嫌う。  だが、記憶を辿ればすでに奴の息子で、俺は海の奪略者として生きていた。  ほんの小さなガキの頃から、目の前には大海が広がり、果ての無い空が頭上を覆う。  通りがかった数少ない人間は皆殺し。  何も生き物がいないような深い紺碧の海も、死体がぶち込まれ、血がにじみ出るとサメどもが知らない間に集まって来る。  海はさ、死の国に繋がっているんだ。    俺はそんな世界で生きていた。  紛れもなく、キャプテン・ロジャー・ストットの息子だった。  
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