記憶

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「そろそろ食料が乏しくなったな」 「そうか?」  船での食料など贅の限りを尽くせるものではない。  まだ備蓄はあるのだが、 「上等のワインが飲みてえな。  それに保存食ばかりじゃ、体が腐っちまう」  俺への催促だ。  ――そろそろ町へ降りよう。 「どこがいい?」 「軍艦と海賊船のいない、だがイギリス人かスペイン人の貴族が住む町だ」  青い瞳の目ん玉をぎょろりと俺の方に向けた。  ――夜襲をかけろと言うことか……    長く伸ばした髭は白くなった。  彫りの深い顔立ちは、目の下のクマを余計に目立たせる。  日に焼けた首には金のペンダント。  垢で薄茶色くなった白いシャツの中に、ペンダントヘッドが隠れている。  俺はそのペンダントヘッドを見たことが無い。  
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