9人が本棚に入れています
本棚に追加
まだガキの頃、ふざけてオヤジのペンダントを盗もうとしたことがある。
寝ている隙に、こっそりオヤジの首に手を伸ばした。
しっかり見つかって、鞭打ちされたんだ。
それ以来、オヤジの物には手を出しちゃあいない。
「なんだ?」
鼻の先を真っ赤にしたオヤジが尋ねた。
――酒に弱くなった。
敵に殺される前に、酒で死ぬかな?
「いや、そのペンダントを見たことが無かったなあってね」
甘い香りのラムを口に含んだ。
オヤジがシャツの中のペンダントヘッドを取り出し、掌の中に収める。
ガーネットが埋め込まれているのは知っている。だが、細かい細工は見たことが無い。
「これは墓場まで持っていくんだよ。ほかの宝物はくれてやっても、この首飾りは俺だけの秘密だ」
「ずいぶんとロマンチストだな。
オヤジに墓など持てるはずもねえのによ」
最初のコメントを投稿しよう!