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絶えない悪寒が、何もするなと脳内で訴える。全身がそれに頷いて、体はぴくりとも動かない。
「ひぐぁっ!」
呻きが一際高く響いた。それが聞こえなくなるのと同時に、またさっきまでの何かを引きずる音が響き出す。
その物音が完全に聞こえなくなるまで、俺はずっと教室内に潜んでいた。そして、やっと何の物音も響かなくなったのを確認してから、逃げるように校舎の外へ飛び出した。
廊下はとても確認できなかった。
* * *
生徒が一人行方不明になったと、その噂が流れたのはテストが終わった直後だった。
全校集会が設けられ、行方不明の生徒の足取りについて知る者がいないか、各教室で聞き込みなども行われたけれど、手がかりはないままだ。
例の出来事は誰にも話してないけれど、多分、行方不明になった生徒というのは、あの日俺が聞いた呻き声の人物だろう。
あの時、廊下で何が起きていたのか。
もし窓から様子を窺えば、俺はその答えを知ることができたのだろう。…そして、もう一人の行方不明者になっていたに違いない。
いなくなってしまった人には悪いけれど、きっと俺の対応は、自分にとって最良の行動だったんだろう。
あの時、廊下に出ずにいた。
あの時、窓から外を覗かずにいた。
あの時、総ての気配が消え去るまで教室内でじっとしていた。
だから今、俺はここにこうして存在できている。
だから、申し訳なさを塗り潰す程に思う。あの時の判断は正しかったと。
判断…完
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