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判断
校門を出かけたところで忘れ物に気づき、俺は、友達に先に帰ってもらって校舎へと戻った。
テスト週間のため、残っている生徒の姿はない。いつもなら運動部の練習の声が聞こえてくるのに、今日はとても静かだ。
静けさの中、足音をバタバタ響かせて教室に駆け戻った。忘れ物の戸を鞄に突っ込み、廊下へ出ようとする。
その時、俺の耳に奇妙な物音が聞こえた。
教室内から顔だけ覗かせて確認を試みるが、まだそうまで遅い時間じゃないのに、廊下の果てはやけに暗くて、目を凝らしても何も見えない。ただ音だけが聞こえる。
何かを引きずるような音だ。誰か、重い物の移動でも命じられているのだろうか。
気にはなったが、多分関わりはない。そう思い、廊下へ出ようとした瞬間、激しい悪寒が背筋を駆け抜けた。
本能が、出てはいけないと訴える。
慌てて体を引っ込め、扉を閉めた。でもそれだけでは足りなく感じて、窓越しでも廊下から見えない位置に身を潜める。
閉め切った部屋の中にいても、外の物音ははっきりと聞こえた。
だんだん大きくなっていく。何かが近づいてくる。
それが教室の外でピタリと止まった。
俺がいることがバレているのだろうか。
姿は見えない筈だが、よりいっそう息を殺し、身を潜め続ける。そんな俺の耳に、さっきまで聞こえ続けていた何かを引きずる音の代わりに、別の音が聞こえてきた。
…『それ』は、人の呻きのようだった。
ごく微かではあるが、苦しそうな呻きが聞こえてくる。
外にいるのは、怪我なり病気なりで苦しんでいる人なのだろうか。だったら出て行って、保健室に連れて行くのを手伝うべきかもしれない。でも…。
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