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プロローグ 1
駿介がその少女を初めて見たのは夜の歓楽街を歩いていた時だった。
あの出会いは決して偶然ではなかったのかもしれない。
駿介は最近そう思うようになっていた。
彼の名前は三宅駿介。
私立高島敬愛学園高校の剣道部主将。
見てくれがいかにも高校生らしい外見の駿介が、夜の歓楽街を歩いていれば当然目立つ。
行き交う人は好奇のまなざしでそんな駿介を見ながらすれ違っていく。
いかにも高校生風の青年には場違いな場所だっだ。
歓楽街は路地裏から大通りまでキラキラとネオンがまぶしい。
こんな場所を歩いている自分は場違いであり不釣り合いだということは駿介自身が感じていた。
周囲を見渡せばネクタイをゆるめ酔って千鳥足気味のサラリーマン達が数名散見される。
彼等は怪訝そうな顔をして駿介を横目で見ながらすれ違っていった。
ある路地にさしかかった時ふいに数名の男達がどこからともなく現れた。
駿介の前後を遮るように立ちふさがる。
あの時の連中か。駿介はとっさにそう思った。
その路地はもともと人通りは少なく、偶然なのかその時まったく通行人は皆無だった。
その路地にいるのは駿介とその男達だけだ。
いや偶然ではないのかもしれない。
するとその中の特に背の高い男が駿介に話しかけた。
「三宅君、なんでこのあたりをうろついているのかな?」
駿介は無言で男をにらみ返した。
「あの時は車の中にいたんでね。君にははじめましてとでも言うべきなのかな」
たしかにあの時、車の後部座席にもう一人誰かが乗っていたような気がした。
そう言うとその男の顔は邪悪な人相に変わり、駿介に向かって押し殺すような太い声で言った。
「とにかく君には用があるんだ。今日こそ俺たちと一緒に来てもらおう」
なんて強引で横暴な恫喝をしやがるんだと思った。
しかし駿介はこのままなにもせずにおとなしくしているつもりはなかった。
あの時みたいに拉致でもしようっていうのか?
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