柑橘系は下心

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 確かにそういう事を考えた事はあった。だけど、実際にそうなってみると少しばかり恐怖心すら覚える。でもこんなチャンス滅多にないから諦めたくないし、途中で終わりたくない。ゆっくりと腕を回す。 「……続き」  小さく呟かれた声に驚いた表情を浮かべる。それはそうだろう。普通同性に強請ったりするものでもないし、ましてや俺とコイツは敵同士だ。しかも、今リアルタイムで自分の所属する組が殴り合いをしているというのに、俺は呑気に事を行おうとしている。まぁ、長にバレたら俺はどうなるんだろうか。 「酔ったのか」 「お前に?」  鼻で笑われ顎を持ち上げられる。それと同時に髪から匂うシャンプーの香り。ずっと匂っていたくなる匂いに目を逸らす。風呂上りのコイツを見ていると、俺の気持ちがどんどん可笑しくなる。 「……何でもない」  今更かよ何て聞こえてコイツは離れる。結局諦めてしまった。諦めたくなかったのに。悲しくて顔を隠すようにしていたらさっきから何なんだよと言われ、それこそ何でもないと怒鳴るように返してはそっぽを向く。所詮、拗ねているだけだ。 「何でもねぇようには見えねぇぞ」 「何でもないから帰れよ! お前本当何しに来たんだよ! 俺の家に来ては風呂入って押し倒すし、お前俺を抱くためにでも来たのかよ!」 期待はしていた。そのまま抱いてくれないだろうかと。その為に抗争中にも関わらず電話して来て、風呂入って、押し倒したのかと思ってしまった。だけど、そうじゃないようにも感じた。俺を抱く為だけに来たならもうとっくに事が始まっているだろう。無理矢理にでも俺を抱くだろう。そういう噂を何度も聞いた事がある。コイツは女で遊ぶ時どれだけ女が嫌がろうとも無理矢理に犯す。という事を噂で聞いた事がある。その噂が真実ならばとっくに俺は今頃犯されている。が、全く俺を犯そうというのもなければ、帰ろうともしない。ただ、俺を見つめて口が開かれた。 「そうだけど。お前の言う通り、抱く為だけに此処に来た」
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