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「なあ、お前就活どうするよ?
正月明けてまだ就職決めてない、とかって俺たちくらいじゃねぇ?」
俺は隣を闊歩する友人、七色静香(なないろしずか)を見上げた。
「七色が静かに香る、で七色静香と言います。よろしくお願いします」
大学のゼミで、こいつが自己紹介した時、教授をはじめ、そこにいた全員が思ったはずだ・・『名前とのギャップ、半端ねぇ・・・』って。
いやさ、あいつの両親だって、まさか、息子がこんなにでかくなるとは思わなかっただろうけどさ・・。
いやそれとも、あいつの親もあいつみたいに強面で『せめて子供の名前くらい、アイドルか、アニメキャラか(どちらにしても女子)みたいにしよう』なんていう思惑があったのかも知れないけどさ・・。
はっきり言って逆効果でしょ。
ギャップあり過ぎて、会った時のインパクト倍増、おまけに恐怖心10倍増し。
いや、俺はいいよ。あいつの隣を歩いてさえいれば、怖い兄さんたちでさえ、避けて通ってくれるし、ましてや、まかり間違っても因縁つけられるとか・・まずないから。
「君・・大きいね・・身長どのくらいあるの?」
「いや・・僕は実際は、そうでもないんですよ、190くらいかな・・」
七色は少し赤くなって、首の後ろを撫でまわした。
おいっ! 十分でかいし! それに、僕、ってなんだ? 僕って!?
お前、その外見だったら「自分」か「俺」だろう・・もしくは「われ」か!?
俺はゼミ生を見まわした。みんな俺と同じように、突っ込みコメントが俊足で駆け回っているようだな・・。
よしよし、俺がみんなの代表として、こいつに突っ込みを入れてやるぜ。
「おいおい、七色。なんだよ、僕、って。お前ってそんな見かけしといて、もしかして『趣味は刺繍です』とかって言っちゃう奴かぁ?」
俺は七色の背中をバシバシ叩いて、陽気に言ってやった。
「はははっ。斎藤君は面白いなぁ。さすがに刺繍はできませんよ。趣味はイラストです」
えっー!!? そっちー?? ギャップ・・、萌えかっ!?
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