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圭の手が僕の手から離れたと思った瞬間、圭が背筋を使って反り返り、二段ベッドに後頭部をぶつけた。
きっと目から星が飛び出ただろうなと思えるほどの、強打だ。今日は災難だね、圭。
なんとかベッドから離れて、床にうずくまった圭は頭を抱えていた。
仰向けの状態から体を起こして、それを見ながら、そろそろ救急箱、必要かなと心配になってきた。
「大丈夫、圭」
「無理……腹減った」
「そっちか」
救急箱はいらないようだ。
ベッドの横の目覚まし時計を見ると、針はもう昼前を指すところだった。僕もお腹すいた。
昨日、バイトから帰ると、圭はリビングで寝ていた。確かに寝ておいてねとは言ったけど……まさかここでとは、と驚き、部屋の中に入ってさらに驚いた。
この時ばかりは僕の顔も驚いた表情をしていただろうと思い返す。
料理はまったくできない圭。でも掃除や洗濯は少々ガサツながらもできない事はない。でも今日は、まるでクリーニングのサービスでも使ったのか思うほど、ピカピカしていた。床のみならず壁も、天井も。
物音に気付いて起きた圭は、疲れからかまだ眠そうだった。
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