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しばらくして寝室から出てきた圭に、皿を渡しながら「どうだった」と聞く。しかし圭の表情は微妙で、僕は黙っている圭を見上げた。
「伊万里のアドレス帳にあったリートの番号にかけたら、親父が出て……」
ちゃぶ台で朝食を食べながら、圭はなんだか嫌そうな顔をする。前から両親とは仲が良くなく、圭は家出をしてここに来たようなものだ。
それが突然電話が繋がってしまったら、そんな顔にもなるんだろうか。僕にはよくわからないけど。
「なんて言ってたの」
「リート、日本にいないらしい」
旅行かな、と思うのが普通だろう。圭はトマトを二切れを一口で頬張り、飲み込んでから僕を見た。
「じーさんの所に行くって、言ったらしい」
「リートさんのおじいさんって事は、確かイギリス」
「そう。不動産の仕事は親父にしばらく一任されたらしいから、家賃も家に持ってこいって」
家賃は今月分は払い終わったから、次は来月なんだけど、リートさんは一体どのくらい旅行するつもりなんだろう。
「俺、家、行きたくないって言ってんのに……」
湯気がたつ味噌汁をすすり、険しい顔をする圭。僕は、箸を置いた。
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