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そもそも僕が借りてるアパートのドアを壊してしまったのだから、責任を持って僕も行かなければならないだろう。
ほんと、なんでこう、複雑なのかな。僕なんかなんにもないのに。
「そうと決まれば、ほら圭。片付けるよ」
「い、今から行くのか?」
「今日しか休みないし、壊れたままなのは嫌だ」
てきぱきと掃除を終わらせ、片付けを済ませて着替える。
玄関のドアに鍵をかけたところで、ふと思った。
「ところで、圭の家ってどこにあるの」
「伊万里が意外と無計画だっていう事、今知った」
図星をさされて言葉を返せなくなった僕は、日除けの帽子を深くかぶり直してごまかす。
確か圭が転校してきた時に、圭を取り囲んでいたクラスメイトが前に住んでいた場所や通っていた学校の事などを聞いていたように思う。
でも僕はその会話の輪の中に入る事がなかったから、内容はまったく知らない。
圭はどこから来たのか、それはどんなところで、どんな風に過ごしてきたのか。
僕はなんにも知らないし、こっちに来てからの事だって、一緒に暮らしてからの事しか知らない。
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