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さらに。
「できねぇの? 無理なの? やめるの? ヘタレか」
「うわ、圭にだけは言われたくない」
思わず素が出た早坂にうなずきかけて、圭の胸板に頬擦りした。圭の手が髪を撫でてくれる。早坂に見せつけるかのように。
「で、どーすんだよ?」
どうしても圭は言葉にして欲しいらしい。それは僕もそうだ。早坂の口から聞きたい、言ってほしい。
あーもう、と早坂が頭を掻き回したのが目を閉じたままの僕にもわかった。
「やめてなんか、やんねぇよ。覚悟しろよ、圭。おれの方がずっと伊万里を愛してる」
「……ぬ」
そこで引けをとって悔しそうに声を出す圭は、やっぱりちょっと情けない。でも、僕を抱く腕の強さは変わらず、やさしくあたたかい。
「伊万里も。圭みたいなヘタレよりおれの方がいいって言うまで……親友でいてやるよ」
素直なようでそうじゃない、早坂の複雑な言い回し。
僕らはこうやって確認しあいながら、これからもつるんでいくんだろうななんて思うと、二人と出会えて、同じ時間を過ごす事が出来てよかったなと思えた。
二人が何を話しているのかもうわからなくなった頃、僕は眠りに落ちていた。
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