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骨董好きな父親が特に気に入ったという、伊万里焼。そのまま命名された僕の名前は伊万里(いまり)
伊万里焼ほど重宝されるような人間ではないけど、そんな僕でも大事に想ってくれる人がいるんだと知ったのはつい最近の事だった。
廊下で土下座をし、額を床にごりごりと押し付ける圭が小さく息を吸い込んだ。
「じ、実はこのドアこの間、両手が塞がってて開けらんなくて、足で蹴っ飛ばしたら壊れちゃってっ、今までは開けっぱなしにしてたから気付かないと思ってそのままにしておいたら言い出せなくなって、今……今、足をぶつけてぶっ壊しました、ごめんなさいっ」
「長いよ、圭」
まったく、呆れてものも言えない。ガサツなだけじゃなく、乱暴だったのかな。考えなしとも言える。
両手が塞がっているから足で開けよう、そこまではわからなくもない。ただ、蹴っ飛ばすのはいかがなものか。そんなの壊れるに決まっている。
しかもよく見れば、鍵まで壊れてる。
「もういいよ、圭。ここで何を言ってもしょうがない」
とにかく大屋さんに相談して、修理の依頼をしなきゃ。
「今日が休みでよかったよ。今、大屋さんに連絡するから……」
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