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そのリートさんは見た目がすっかり外国人で、イギリス系の彫りの深い顔立ちをしている。背も高く、僕より大きな圭よりデカい。
本場イギリスの男性に比べてフレンドリーで明るく、特に"好き"という感情を大っぴらに表現できる人だ。人種間違えたんじゃないかな。
本当の名前は梨斗(りと)さん。本人がカタカナで呼んでくれと言うものだからそれで定着しているし、なんの不思議もない。ただ中身は完璧に日本人で、英語はまったく話せないという。
「……俺よりリートの解説、多い」
「設定が多いんだよ、面倒だね」
さらに言えばリートさんは圭のお兄さんで、そこにはまた複雑な家庭環境があるとか。僕らの関係より深いよね、脇役の設定。
いまだに押し倒されたままの僕は、焦ったままの圭の顔を見つめた。その視線に気付いたらしい圭が、急に顔を赤くしていく。
「いや、これは、ちょっと勢いが、その!」
「なんの」
しどろもどろになる圭の瞳に僕の顔が写る。
百面相する圭と違って、まったく変わらない表情。結構色々考えたりしてるのに、表にでない感情。
僕は昔から感情が表に出にくく、表情が変わらないと言われてきた。
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