*おさらい*

9/19
前へ
/545ページ
次へ
携帯電話を持っていない自由な方の手を持ち上げ、明るい色をした前髪をよける。赤くなった額に指を触れさせていると、じんわりと熱を感じた。 「いいいいいいい伊万里?」 「赤くなってる、おでこ」 あんなに必死に土下座とか、しなくていいのに。冷蔵庫の時もそうだったけど。 ここは僕が借りたアパートだけど、圭も一緒に住んでるんだから。 額を撫でていた手を、そっと頬へ滑らせる。それから何か言いたげな唇を撫でた。 圭の頭から湯気が出そうだ。まだ何もしてないのに。 「圭って、元気だよね」 「ど、どういう意味だ?」 危うく指先を噛まれそうになりながら、僕の指は圭の顎へ逃げ、男らしい喉仏をくすぐる。 「昨日も、あんなにしたのに……」 首の周りを広くカットされたシャツから、逞しい肌が覗く。その首もとに指を引っ掻けた。 「僕なんて、まだダルさ抜けないし」 「やややややや」 「寝不足だし」 服に引っ掻けていた指を離し、そっと圭の耳に触れた。 圭が僕の手を離してくれたら、そのまま抱き付けるよう。 「もっかい、する?」 ゆっくりとまばたきをする間に、圭が目を回した。
/545ページ

最初のコメントを投稿しよう!

58人が本棚に入れています
本棚に追加