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『落とし物』
彼は角田を思い出し眉間にシワを寄せながら、
ハンドルをきり交差点を左折した。
『落とし物?だったら届けなさいよ』
女編集長は眼鏡を拭いた後で手を伸ばし封筒を手にする。
『やだね、角田ともう一度顔を合わせるなんて』
『角田?知り合いなら尚更困っているんじゃない』
『どうだか、でもたとえ返したとしても結果は同じ。彼はまたくたびれた封筒を持って出版社に持ち込みし同じようなダメ出しを受けますよ』
『出版社?持ち込み?』
彼女の顔つきが変わる、夜目は表情を確認しなくとも声色でわかるのだ。
『失礼ながら原稿を見させてもらうわ』
『編集長…』
こうなる事は封筒を見つけた瞬間に彼は予測出来てはいたけど。
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