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噴水のかすかな心地よい水音と乾いた草のにおい。 サワサワとそよぐ小春日和の風。 どこかに隠れている小鳥たちのチチッというさえずり。 遠くではしゃいでいる子供達の楽しげな声。 ポタポタと流れ落ちる涙をぬぐうのも忘れて、マキはその場に立っていた。 長い長い、気の遠くなるほどの時間を取り込んだあと、ありとあらゆる感情に押しつぶされそうになりながらマキはゆっくりと息を吐いた。 それでもまだ眠り続けるその男を愛おしそうに見つめた後、 マキはその頬にそっとキスをした。                                 
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