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【2】 その場所で再びその男を見つけたのはその日の夕方だった。 必ずここにもう一度来るという気がして制服姿のままマキはこの辺りをうろうろしていた。 学校を休むのはもう今月に入って6日目。罪悪感も薄れていた。今朝も母とは会話していない。 「ビンゴ」 男を見つけてマキは小悪魔的な笑いを浮かべた。 能力に裏付けされたものなのか、こういうカンは昔から冴えていた。 “何か”を探し疲れたのか男は行き止まりを作っている高い塀によりかかって 暮れていく空を眺めていた。 かなり年上だと思うのに、その目はやけに少年っぽく見える。 やはり"落とし物"は大事な物だったんだとマキは確信した。 じっと観察している視線に気づいたのか、男はマキのほうに視線をむけた。 「あ……」 「何か探し物ですか?」 少しばかり笑いを含んだ言い方になった。 「……どうしてそう思うの?」 「わざわざ嫌いな猫が出没しそうな所に戻ってきてるから」 少し意地悪い言い方をしてみた。 「ああ、猫ね。……格好悪いところ見られちゃったな」 照れくさそうに髪をかき上げながら笑う。 笑うとなんとも優しい表情になるのにマキはすこし面食らった。 ―――ダメダメ、この人はきっと何か悪いことに荷担してるんだ。私だけが知ってる秘密。 犯罪者は必ず現場に戻って来るとよく聞く。もうこれは間違いないとマキは思った。 目の前の男の運命を握っているようなワクワクした気分だった。 思いがけず手に入れたスリリングなゲーム。 「今日、そこのマンションにパトカーがいっぱい来てたの、知ってます?」 少しの変化も見逃さないようにマキは男の目を見て言った。 「へぇー、そう。何かあったの?」 トロンとした笑みには何の焦りも見られない。 「泥棒でも入ったんじゃないかしら」 「ふうん、物騒だねぇ」 まったく顔色は変わらない。男は興味ありげにマンションをちらりと見上げただけだった。
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