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救いようのない悲しみと心を凍り付かせるほどの鮮烈な光景。 さらに意味を成さない画像の断片が矢継ぎ早に現れては消える。 優しい女性の笑顔、まだ幼くか細い手に握られた刃物。 おびただしい血の海からすくい上げられたクロス、―――クロスのペンダント。 咄嗟に男が手を離さなかったらマキは倒れていたかもしれない。 「びっくりした~! どうしたの?」驚いてマキを見つめる少年のような目。 めまいを必死でこらえながらマキは男を見つめ返した。ふり絞って出した声が震えていた。 「ごめんなさい……」 「え?」 「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!!」 人の心を覗くということはこういう事だったんだ。 激しい後悔と吐き気と罪悪感に耐え切れずマキは両腕で自分を抱え込んだ。 「ねぇ、どうした? 気分が悪いの?」 心配そうにマキをのぞき込むその目をマキはもう見れなかった。 「……あした。あしたまた来て下さい。そこの噴水公園。お昼……お昼頃。お願い、待っててください!」 必死にそれだけ早口でしゃべると、マキは走り出した。 逃げる、といった方が良かったかも知れない。 自分がやってしまった深い深い罪から。
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