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「お願いノイギーア、あまり森へは行かないで」  ミルト姉さんからは再三言われていた。  でも、行かずにはいられなかった。  蛍光色のキノコだとか、奇妙に入り組んだ形の根っこだとか、強い香りのする葉っぱだとか、ヘンテコで面白いものがいっぱいあるんだもの!  ミルト姉さんは僕が森から拾ってきたヘンテコなものを見ると、いつも困った顔をする。実際、頬に手を当てて、困ったわと言う。 「あの森のよくない噂は、ノイギーアだって知っているでしょう?」  僕は冷蔵庫からコーラを取り出して、ぐいっとあおる。  ミルト姉さんは本当に心配性だ。 「もちろん知っているよ。呪われた魔女が住んでるっていう、あのおとぎ話でしょ?」  村のこどもならみんな知っている話だ。  もう何百年も前のこと。  僕らの村にある小さな森に、フルーフという名の魔女が住み着いた。フルーフはとても悪い魔女で、例えば赤子をさらって得たいの知れない薬の材料にしたり、悪魔を呼び出しては夜通し大騒ぎしたり、少しでも気にくわない人間がいると、そいつをカエルに変えてしまったり、それはそれは酷いことをしたらしい。  やりたい放題の魔女に、ほとほと困り果てた村人たちは、教会に助けを求めた。  教会の神父様は村人の期待に応え、神のご加護で悪しき魔女をやっつけてくださったそうだ。
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