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Ⅱ
でも小賢しい魔女フルーフは、次の魔女を用意していた。その魔女は村に直接悪さはしなかったものの、森に入った村人を、時折さらってしまう。さすがの神父様も、この魔女には手が出せなかった。だってちらりとも姿を見せないし、さがしても見つからないから。
何百年も経った今でも、フルーフの森にはその魔女が住み着いていて、時折森に立ち入る村人をさらってしまうらしい。
こどもを森へ近づけないための、大人が創った幼稚なおとぎ話だ。知ってはいても、誰も信じちゃいない。
困り顔でミルト姉さんは、でもね、と言葉を続ける。
「でもね、ノイギーア。おとぎ話が本当ではなくても、行方不明になる人がいるのは本当なのよ?」
もちろん、それも知ってはいる。
そう広くもないはずの森で、何年かに一度、忘れた頃に人が消えてしまうのだ。大人でもこどもでも、森に詳しいはずの人でさえも。意図的に失踪した人も中にはいたのかもしれない。でも、どう考えてもそんなことしそうにない人も、いなくなっている。事故にでもあったのではないかと森中を捜しても、屍さえ見つからない。
そんな時、村では『魔女が出た』と噂された。そんな非科学的なこと、馬鹿馬鹿しいとは思いながらも、それ以外には説明がつかなかった。
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