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Ⅴ
ミルト姉さんが今にも泣き出しそうな顔をして、森の入り口にたたずんでいる。
オルドヌングのおかげで森から出られたのはよかったけれど、いつの間にそんなに時間がたったのか、空には大きな月とたくさんの星が輝いていた。
僕はとても気まずくて、なんとかこの場を切り抜けなければと言い訳をさがしたが、何も思い付かない。今まで、森で迷子になったこともなければ、こんなに遅くまで帰らなかったこともなかった。
助けを求めてオルドヌングを見れば、役目は終えたとばかりに森の入り口にある木の枝にとまって、羽の手入れを始めている。
「……心配した」
ポツリと、ミルト姉さんが言う。
胸がずんと重くなった。今まで、いたずらをして怒られたことはたくさんあったけれど、こんなに悪いことをしたという気持ちになったことはない。
「ごめ」
謝ろうとした次の瞬間には、ミルト姉さんにぎゅっと抱きしめられている。そして耳元でそっと囁かれた。無事で、本当によかった。
ミルト姉さんの言葉は魔法のようにじわじわと心に染みて、僕は泣き出したいような気持ちになった。
「ごめんなさい」
ふんわりと甘い匂いのするミルト姉さんの腕の中で、僕は小さなこどもみたいに素直に謝る。
「心配かけて、ごめんなさい」
ミルト姉さんは僕を放して、にっこりと笑った。
「帰りましょうか?」
「うん!」
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