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Ⅵ
帰りの道は、ミルト姉さんと並んで歩いた。
くすぐったいような、気恥ずかしいような、落ち着かない気分になる。
「ところで、ノイギーア。その本、どうしたの?」
サンザシの木の下で見つけたヘンテコな本を、僕はちゃっかり持ってきていた。
「うん、森で拾った」
例の困った顔をするミルト姉さん。
ミルト姉さんのお小言が始まると、長い。僕は誤魔化すようにあわてて言った。
「ねぇ、この本、なんかヘンテコなんだ。表紙も変だし、中身は真っ白だし」
言って、白いチューリップと枯れた植物の表紙をミルト姉さんに向ける。
「ほら、変だよね? わざわざこんな枯れた植物、表紙になんてしなくてもいいのにって思わない?」
「……」
ミルト姉さんは本を見て、はっとしたように立ち止まる。並んで歩いていた僕も一緒に立ち止まり、キョトンとしてしまった。
「……ミルト姉さん?」
本を凝視するミルト姉さんの様子が、なんだか変だ。
まるで本にとり憑かれてしまったかのように、食い入るように見つめている。
「ミルト姉さん、この本、知ってるの?」
「え?」
ミルト姉さんが驚いたように僕を見た。やっぱり、なんか変だ。
「この本、知ってるの?」
もう一度、僕が少し強い口調で言うと、どこか気の抜けたような様子で首を振る。
「いいえ。知らないわ」
「どうしたの? なんか変だよ?」
「なんでもないの。さぁ、帰りましょ?」
再び並んで歩き出すけれど、もうさっきまでのくすぐったいような、気恥ずかしいような気持ちにはならなかった。
そんなにこの本が気になったのかな、と思ってまじまじと表紙を見つめ、おやと首をかしげる。
白いチューリップの隣には、確か、枯れた花が彫り込まれていたはずだ。
なのに、今、白いチューリップの隣には滲むような鮮やかな色の青いアジサイがあった。
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