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お隣さんから教えてもらった薬草の知識で、私は村の薬屋になった。困っている人の役に立てるのはうれしかったけれど、人々はありがたいと言いながら、どこか煙たがっているような、怖がっているような素振りも見せる。だから話し相手は、あいもかわらずお隣さんだけだった。
薬は必要だけどお金がない、という人もたくさんいて、私はそういった人からはお金をとらない。おかげで、薬はたくさん出ていくのに、お金がなく貧乏だという状態が長く続いた。森に出入りしていたため、食べ物には不自由しなかったけれど、薬を作るのにもなにかとお金がいる。調合するのに必要な物がすべて森で手に入るとは限らないのだ。
私は家財を少しずつ売り払ってなんとかお金を工面していたけれど、それにもとうとう限界がくる。困っている人の助けにはなりたいけれど、こればかりは私一人の力ではどうにもできなかった。
なんとか説明して、わかってもらいたかった。申し訳ないと思っていること。私も精一杯がんばったこと。
でも、ただで薬をもらえないとわかると、今まであれだけ感謝の言葉を述べていた人々が、手のひらを返したようになってしまうのには困惑してしまう。
ある夜、私は一つの夢を見て目を覚ました。
フルーフの本が森で、月の光を浴びてきらきらと輝いているという、ただそれだけの夢。
気になって枕元にあるはずの本に手をのばしてみるけれど、あるはずの場所にフルーフの本はなかった。私はベッドから起き上がり、あわてて部屋中を探し回る。でも、どこにもない。
まさかとは思ったけれど、他にあてもなく、森の中へ探しに行くことにする。夢で見た場所がどこなのかは見当がついていた。
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