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「拓海くん。隣、座ってもいい?」
隣の席を引き座る仕草をすると、拓海はチラッと横目で見て小さく頷いてきた。
「ありがとう、拓海くん。こんな素敵なパーティー開いてくれて」
話したいことはたくさんあるが、一先ず今日のお礼を伝えるも、拓海は何も反応を返してこない。それでも逸樹は話しかけ続ける。
「ねえ、拓海くん。どうして、一度もお見舞いに来てくれなかったの?」
「――――っ……」
一番聞きたかったことを、直球で尋ねる。拓海は息を飲んだように視線を向けるが、すぐに視線は落ち、表情にも影が落ちてしまう。
「僕、心配だったんだよ。拓海くんに何かあったんじゃないかって。それに、すごく寂しかった……」
「……ごめんなさい」
弱くなっていく逸樹の声に反応したのか、ようやく拓海が口を開いた。
「ごめんなさい。……俺、怖かったんだ。自分のせいで逸樹さんが怪我をしたんだって考えると、どんな顔して会いに行ったらいいか分かんなくて……。守るって言いながら、守れなかった俺をふがいなく思って、軽蔑するんじゃないかって……」
自分を責め、声を震わす拓海。そして、彼の顔は未だに逸樹に向けられない。逸樹は横で話を聞きながら、両手で拓海の頬を包み無理やり自分の方に向けさせた。そして、強制的に自分と顔を向き合わせた。
「なんで、そんなこと言うの? 僕は拓海くんを軽蔑なんてしないよ。だって、拓海くんは僕が助けてほしい時に、本当に来てくれたんだよ」
「…………でも」
顔を向き合わせながらも、逃げるように視線が逸らされ落ちていく。それなのに、なぜか逸樹は追い込むような言葉を言い放つ。
「だけど、怒ってる。拓海くんが意味もないことを心配して、会いに来てくれなかったことは。僕、すごく心配したんだからね。弁護士さんは大丈夫だって言ってたけど、本当は捕まっちゃったんじゃないかって」
ふいに夜の病院の寂しさを思い出し、逸樹はキュッと唇を噛み締める。
「僕……、寂しかったんだよ。拓海くんの姿が見れなくて、声が聞けなくて、すごく、すごく寂しかった、心細かった」
「ごめんなさい……」
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