『高宮逸樹』

7/14
前へ
/176ページ
次へ
「拓海くん。隣、座ってもいい?」  隣の席を引き座る仕草をすると、拓海はチラッと横目で見て小さく頷いてきた。 「ありがとう、拓海くん。こんな素敵なパーティー開いてくれて」  話したいことはたくさんあるが、一先ず今日のお礼を伝えるも、拓海は何も反応を返してこない。それでも逸樹は話しかけ続ける。 「ねえ、拓海くん。どうして、一度もお見舞いに来てくれなかったの?」 「――――っ……」  一番聞きたかったことを、直球で尋ねる。拓海は息を飲んだように視線を向けるが、すぐに視線は落ち、表情にも影が落ちてしまう。 「僕、心配だったんだよ。拓海くんに何かあったんじゃないかって。それに、すごく寂しかった……」 「……ごめんなさい」  弱くなっていく逸樹の声に反応したのか、ようやく拓海が口を開いた。 「ごめんなさい。……俺、怖かったんだ。自分のせいで逸樹さんが怪我をしたんだって考えると、どんな顔して会いに行ったらいいか分かんなくて……。守るって言いながら、守れなかった俺をふがいなく思って、軽蔑するんじゃないかって……」  自分を責め、声を震わす拓海。そして、彼の顔は未だに逸樹に向けられない。逸樹は横で話を聞きながら、両手で拓海の頬を包み無理やり自分の方に向けさせた。そして、強制的に自分と顔を向き合わせた。 「なんで、そんなこと言うの? 僕は拓海くんを軽蔑なんてしないよ。だって、拓海くんは僕が助けてほしい時に、本当に来てくれたんだよ」 「…………でも」  顔を向き合わせながらも、逃げるように視線が逸らされ落ちていく。それなのに、なぜか逸樹は追い込むような言葉を言い放つ。 「だけど、怒ってる。拓海くんが意味もないことを心配して、会いに来てくれなかったことは。僕、すごく心配したんだからね。弁護士さんは大丈夫だって言ってたけど、本当は捕まっちゃったんじゃないかって」  ふいに夜の病院の寂しさを思い出し、逸樹はキュッと唇を噛み締める。 「僕……、寂しかったんだよ。拓海くんの姿が見れなくて、声が聞けなくて、すごく、すごく寂しかった、心細かった」 「ごめんなさい……」
/176ページ

最初のコメントを投稿しよう!

291人が本棚に入れています
本棚に追加