『高宮逸樹』

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「……んっ、……ぁん……」  壁を割り入り込んでくる熱い塊。それが身体の内側で躍動するたび、全身には甘く心地よい刺激が伝わる。 「逸樹さん。……好きだよ」  自分を見つめながら囁かれる声を聞くと、この上ない幸福感が広がっていく。  大好きな腕に抱かれ、その温もりに溺れていくと、逸樹の声は自然と甘く大きくなってしまう。そして、愛しい人を見つめる火照った瞳が、拓海の衝動をさらに煽っていく。 「逸樹さん……その目、エロいよ」 「んっ……。拓海くんだって……おんなじ……だよ」  自分と同じく欲情を孕んだ黒い瞳を見上げ、逸樹は微笑む。  拓海の手が逸樹の欲情を現す場所を柔らかく掴み、上下させていく。ふいに与えられた刺激に熱っぽい吐息が漏れ、先端からは密が溢れ拓海の手に絡んでいく。そして、奥まで突き挿れられた衝撃に身体を大きく跳ねさせる。ほどなくして、強まった刺激に逸樹は果て、ぐったりと身体をベッドに沈んでいった。  律動を止めた拓海は何度もキスを落とし、逸樹が落ち着くのを待っていた。桃色に染まった胸が規律正しくゆるやかに上下し始めたのを眼下に捉えると、拓海は軽々と逸樹の身体を抱き起こし、胡座をかいた自分の足の上に腰を落とさせた。そして、優しく唇を重ねながら、下から猛りを突き挿れた。 「――っあん」  一気に奥まで突き挿れられ、身体が大きく弓逸る。 「逸樹さん、腰動かして」  その求めに逸樹は素直に応じる。身体を拓海に預け、ゆっくりと腰を揺らして自分でイイ場所に拓海を持っていこうとする。  甘えさせてと言いながら、本当は自分の手で拓海を悦ばさせたいと逸樹は考えていた。しかし、気がつけばいつも通り拓海が主導権を握り、自分が悦ばされてしまっている。だが、今の逸樹には先の目的を遂行するだけの意識は残っていなかった。甘い痺れに蕩けてしまった意識は、ただこの幸せに浸り甘えたいという願望だけを顕著にさせてしまっていた。
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