序 破

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 この町の人達は、何が起こっても驚かなくなってる。  ご当地アイドルが驚きの爆発的人気を勝ち取ったおかげで、数年で一気に人が来て金が落とされて色んな新しいものが出来て色んな人が移り住み始めてがらっと雰囲気が変わってしまった。一息に言わないと途中で信じられなくなる程には様変わりしてしまって、出かける度に便利さとごちゃごちゃさに気持ち悪くなる。  特に変わったのは、ヤクザな人達が増えたこと。それによって、過激な空気がそこら辺に充満している。夜中出歩くのはご法度だという認識が広まっている。  だけど結構そうでもない。  私は太陽が好きじゃないから極力夜中にしか出歩かないけれど、そういう危ない人に出くわしたことはない。おそらくもっと中心街か、それか人気が全くない様な所でなにがしかをしているんだろう。  まあとにかく、私には関係ない。私には関係ないというスタンスでさえいれば全く関係ない。  今日も深夜零時のちょっと前、私は近くのコンビニにいく為に外出中。耳を澄ませば銃声とか聞こえてくるかなって止まって目を瞑ってみるけど、虫の声と車の音しかしない。というか車の音がしている時点で人いるじゃん。コンビニやってる時点で人いるじゃん。  ほらやっぱり、みんな怖がりすぎだよ。ああいう人は律儀だから、一般人には手を出さないんだって。  一般人でいるためには、関わらなければいいだけなんだから。  街灯以外で唯一の光源であるコンビニに吸い寄せられる私はまるで虫みたいだ。無駄にある敷地を駐車場としていて、そこに誰か溜まっていればいいものをここは誰も来ない。なんでやってるんだ。正解はお昼が忙しいからです。夜に来る私が皆から言わせればイかれてるんです。  まあでもほら、私だけじゃないし。ほらあっちからも小さな子虫が、おやあ?  あれはちょっと小さすぎませんかね。  私の反対から現れたのは幼女だった。いやほんと、あれ童顔とかじゃないよね間違いなく幼女だよね。こんな時間に? おいおい親は何をやってるんですか。  思わず止まってしまって幼女を眺めてしまう。段々と近づいてきて、コンビニの明かりでその全体図が見えると納得してしまった。  ああ、育児放棄だ。ネグレクトっていうんだっけ。  髪の毛はぼさぼさ、服は少し汚れているし、サンダルは親のものなんだろうねだぼだぼ。だけど目だけは純粋というか、一生懸命っていうか。
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