第1章

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7  ……あきらかに暴力行為が行われている……  凶悪犯罪課に所属する拓も、こういう争い事を多く対応するパトロールから風紀課刑事になったサミュエル=デトリス刑事も、物が壊れガラスが割れ罵声が飛び交っていれば何が起きているかは予想することができる。  そして、一発の銃声が聞こえた。 「これはヤバいな」  二人は物音がするドアの前まで来ると一度立ち止まり耳を済ませる。複数の男の声が聞こえる。拓は慎重にドアに手をかけた。電子式で施錠されている。ドアは頑丈で蝶番もドアノブも拳銃弾で破壊するには時間がかかりそうだ。 「ほれみろ。サクラちゃんがついてきて正解だっただろー」  拓の後ろから進み出たサクラは、四次元ポケットから電子鍵まで対応する非販売品の最新のピッキング機を取り出した。拓は「またそんな物勝手に持ち出して」と嫌な顔をしたが今は説教をする時ではない。 サクラは手馴れた手つきで電子鍵を開け始める。鍵はすぐに開いた。  が…… 開けた瞬間、サクラの表情に警戒色が浮かぶ。 「どうした?」と拓。サクラは黙って意識を集中させたままだ。数秒間ドアの向こう側を集中して探る。 「問題発生。ドアの前にバリケードがある。家具を積んだみたいだから蹴破れるとは思うけど」口早にそう言い終えたとき、サクラはドアの向こうの異変に気付き叫んだ。 「伏せろっ!! 拓ちんっ!!」 「!?」  その声を聞くと同時に拓はデトリスを押し倒し自分も伏せた。次の瞬間、部屋の中からドア越しにSMGが放たれ拓たちを襲った。弾はドアや壁を貫通し拓たちの頭上を飛び交う。 「いきなり問答無用だねぇ」と暢気に呟くサクラ。「今21発撃ち終えた」 「ワンラウンド終了だな」  SMGの多くは30発連だ。1マガジンを使い切ったはずだ。声は低く重いが音は大きくない。 「サプレッサー付きのMAC10かな」拓は冷静に呟く。イングラムMAC10は裏社会でもっとも流通しているSMGだ。 この程度の銃撃戦は拓たちにとって特別ではない。だが風紀課の新人刑事デトリスは違う。すぐに携帯電話を掴んだ。応援を呼ぶためだ。その気配を察知し、拓は慌ててデトリスを止める。 「何故です!? フルオートを持った犯人がいる!! きっと誰かを殺した!」 「この件はFBIの事件だ。市警が介入するとややこしくなる」  拓は口早にデトリスに命じると立ち上がった。
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