第1章

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「FBIだ! 無駄な抵抗はやめろ!!」  拓は手順に従い叫んだ。あくまで形式で普通の犯罪者がこれで納まるはずがない。すかさず拓はベレッタの撃鉄を上げトリガーに指を置いた。だが、再びSMGが唸り暴れ狂う事はなく、逃げた気配もなく待ち構えているような雰囲気もない。 さらに驚くべき事が起きた。 「FBIと言ったな? クロベ捜査官か!?」姿を隠した襲撃者が、静かに言った。 「その相棒だ」 「他の捜査官はいるか?」 「市警の刑事がいる」 「ナカムラ捜査官! お前一人、ここに入ってこい。他の人間が一緒だったりパトカーがこのブロックに入ったら重要なものを失う事になる! 理解したなら20秒以内に姿を見せてくれ。従うならけして撃たない」  相手はユージだけではなく拓の事まで知っている。これで相手の素性は大方知れた。マフィア直属の人間だ。 「了解した」  拓は頷くとデトリスのほうを見た。デトリスは意味が分からず困惑している。拓は小声で「従って下さい。この件、深入りすると君の命も危ない。今回はややこしい事件で、これはFBIの事件です。犯人は重武装していて今の要求を拒めば暴れだす危険があります。ここは任せてください」と伝えた。言葉は丁寧だが有無言わさぬ強い表情だ。デトリスは頷いた。  ドアの向こうに置かれたバリケードがどかされていく音が聞こえる。そしてその音も止んだ。後はドアを開くだけだ。 「今から部屋に入る! 銃は捨てない」 「構わない。入れ」  拓はデトリスに待機を命じ、ベレッタを構えゆっくりと部屋の中に入った。そして、<非認識化>を強化したサクラもそっと後ろに続く。  オフィスはNYの女性経営者らしくオシャレで、広いワンフロアーをガラスで仕切り、所々に観葉植物と、所属するモデルの女性たちのポスターがいたるところに貼られている。 だが室内は酷く荒らされ、血飛沫があらゆる所にある。床にも致死量と思われる血溜りが何箇所もあった。それを見て拓の表情は僅かに曇った。  拓(とサクラ)がフロアー中央まで来た時…… レザージャケットを着たの大柄の男が二人現れた。 「失礼しましたナカムラ捜査官。私はシーゲル・ファミリーの者です。どうぞ銃をお下げ下さい」  二人ともSMGを手にしているが、銃は下げられ引き金にも指はかかっていない。
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