第1章

7/32
前へ
/32ページ
次へ
 ユージは自分のPCを立ち上げ、本部のマック=ドルトンから送られてきた報告書のデーターを開いた。人身売買関係組織、売春組織、少女愛好家の名簿などがまとめられている。しかしマックがいっていたとおり、北東海岸だけでもその数は膨大だ。<ローズガーデン>の名前もその中に入っていた。片っ端から当たって見つかるかどうか…… 「サクラちゃんの超能力使うカイ?」 「いらん」ピシャリと即答するユージ。基本的にユージも拓も事件捜査でサクラの力を使う事を嫌う。今回の事件は相手が厄介なだけで、特別な事件とはいえない。 「第一、サクラに何ができる? <狂犬>を見つけられるか? 顔も分からない<マリア>を見つけ出せるか? それは無理だろ」 「うぐっ…… 拓ちんの分際で生意気な」  サクラは仏頂面で報告書データーを睨む。確かにサクラの超能力を持ってしても今の状況下でできる事はない。精々高い知能を生かすくらいだが、いくら知能が高いといっても犯罪心理や捜査は素人だ。  サクラが報告書と睨めっこしている間、ユージはマフィア関係を。拓はNYPDに連絡し情報を集めたが、芳しい成果は何もなかった。  午後6時…… 定時就労時間を過ぎた。 「飽きた」  ペタッ……とユージのデスクに這い蹲るサクラ。サクラなりに色々推理するのは面白かったが、居所まで当てるということはいくらサクラでも無理だった。色々「ブルックリンの裏町」や「NYじゃなくてニューアークにいるんじゃない?」とサクラなりに推理してみたが、言った自分でも自信はなく、拓は三度に一度は嫌々な顔しつつ協力して電話確認はしてくれたがユージは無視…… サクラとしては面白くない。このあたりなんだかんだと甘えん坊だ。 「残りは家でやるか」さすがのユージも噂話や推理データーだけで追いかけることに限界を感じていた。疲労も怪我による微熱もある。次あの<狂犬>と対峙することを考えたら体調はできるだけ整えたい。 「今日の報告書出して帰ろう。それまで待っていろサクラ」 「ほいほーい。ああ、そうだ。昨日はエダに心配させたから、今日はご機嫌取りに<ボローニェ>のスペシャル・チーズケーキを買って帰るっていうのはどーだろうか? 1ホールで」 「お前が食べたいんじゃないか」と拓。拓も切り上げるため自分のデスクで今日一日の簡単な捜査活動報告書を書き始めている。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加