0人が本棚に入れています
本棚に追加
〇雑居ビル 外観
繁華街にある雑居ビル。
〇同 事務所 中
机が塾の教室のように並ぶ。5,6名 が席につき携帯電話で話 をしている。
席に座り携帯で話をする金髪頭の相川 省吾(22)。隣の席に座って省吾の 会話を聞いている前沢聡(20)。
省吾「うん、うん、番号変わったから電話しただけ・・・」
〇相川家 外観
二階建て一軒家。門の表札に『相川』の文字。開く門扉。
〇同 玄関 中
ドアが開き、相川良子(52)と松田 米子(75)が大きな荷物を抱え入ってくる。
良子「お母さん、胸の具合は?長旅だったし」
米子「これから省ちゃんと暮らせるんやけん、なんともなか、あっワクワクして具合が悪ぅなったらどうしよ、10年何年ぶりやけねぇ」
引きつり笑顔の良子。笑顔の米子。
〇事務所 中
電話を切る前沢。横にいる省吾が話し かける。
省吾「初日にしては、まぁまぁだな」
前沢「相川さん、すげぇっす。完全に自分の息子だと思ってました」
省吾「だろ?なんで分かんねぇかな?と思うくらいわかんねんだ、で、このリスト」
省吾、束になった紙を手に持ち、
省吾「この卒業名簿の上から下まで片っ端から電話していくから、二人一組で」
前沢「これ、全部っすか?」
省吾「そっ全部。そううんざりすんなって、その分すんげぇから」
省吾、指でお金を意味する丸を作る。
省吾「じゃあ、次、俺が2日目の客に電話すっから」
前沢「なんで2日に分けて電話するんすか?」
省吾「いいか、今振り込め詐欺は警戒されてるだろ?初めから金振り込んでって言ってもすぐにバレんだよ、知らない番号からかかってくるし、だから、前の日に番号変わったっつって電話して安心させとくの。じゃかけっから、聞いといて」
名簿を見ながら電話をかける省吾。
× × ×
携帯で泣き声交じりで話す省吾。
省吾「母さんごめん、闇金なんかに借りちゃって、ありがとう、家族には言わないで」
省吾、電話を切りガッツポーズをした 後スタッフ全員に向かって、
省吾「一名様ご入金でーす、ありがとうございましたぁ」
スタッフたち「あざーす」
〇相川家 リビング 中 (夜)
リビングに隣接する食卓で食事をして いる良子と米子と相川圭吾(55)。
米子「圭吾さん、すみませんねぇ、心臓の悪かけん呼んでもろうてから」
圭吾、食べながら少しだけ会釈する。
沈黙。
最初のコメントを投稿しよう!