第9章 君のせい

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「ご迷惑でないなら……ママはいいのよ……」 母親にしたら 藁にもすがる思いなんだ。 「やった!すごく楽しみだよ」 それが息子の 猿芝居だと分かっていても。 「よかったわね。今日は元気がなかったから……」 「ああ、ママがリカを呼んでくれたおかげだよ」 命に係わるような 変な真似されるぐらいならと止められない。 「それじゃ……」 しかし 立ち去りかけて 良心がとがめたのか――。 「手土産にパイを焼くわ。皆さん好きかしら?」 アンジュの母親は 腫れ物にでも触れるかのように 一瞬だけ僕を振り返り。 「ええ……と思います」 「そう。よかった」 言うと足早に姿を消した。
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