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もうどれくらいの間、叫び続けていたのだろうか?
大人しくなった私は家の壁にもたれながら天井を見上げる。
柱が腐って屋根が一部剥がれている。
家の中は荒れ果て、壁も引き戸も箱も庭も何もかもが崩れていた。
私の体は雨に濡れ、風に晒され、汚れが目立つ。
それでも、剥がれた天井から見えた白く輝く月を見て私は安堵の笑みを浮かべる。
あの夜の空に変わらず輝く月を家の中で見られるようになった幸福に私は満たされていた。
もう、誰も来ない。
もう、誰もいらない。
私の姿を見てくれないなら
私の声を聞いてくれないなら
私の願いを叶えてくれないなら……。
虚ろな目で私は美しく輝く月を見る。
あれ?いつからだろう?
あの素晴らしく美しい銀月がくすんだ色の白に見えるようになったのは?
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