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よくわからないまま、私は更に時を重ねる。
段々と人間の中にも彼女と同じように“誰かの為”に願いを捧げる者が多くなっていった。
よくわからないまま、私を頼り、願いを捧げる人々のために力を振るう。
金属片の形が幾度と変わり、その度に食べ物が私の下に届くことが減っていった。
よくわからないまま、人間の願いを叶え続けたがみんな幸せになれただろうか?
段々と、私に礼を述べる者が少なくなってきたせいか、私には彼らが幸せかどうか確認できずにいた。
また、金属片も願いの前に投げ入れる者が多くなっている。
この金属片にどんな価値があるのかわからない。
それに私の名前ももう長いこと呼ばれていない。
ほんの少し胸のあたりがモヤモヤするが、それでも私は訪れる彼らの願いを叶え続けた。
自分の中で彼らの願いを叶える度に鳴り響く高さと大きさの異なる音を聞きながら、
その音が何を示しているのか、その意味も分からずに……。
淡々と
淡々と
だって私は“人の願いを叶える神様”なんだから……。
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