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この日……、突然の轟音と共に空が赤く染まった。
私が空を見上げていると、私の家の前に多くの人間が集まってきた。
私が家の玄関の前に降り立ち、彼らに問う。
「どうしたの?」
自分でも久々に聞く私の声。
その声に答える様に彼らは“願う”。
「「「神様!助けてください」」」
名前を呼ばれないことにほんの少し胸がチクッと痛む。
こんな気持ちは初めてだったが、それを無視して私は力を振るう。
周囲の轟音をかき消すような重く鋭い騒音と共に、自分の家の周りにいる人間を助けた。
全部で200人くらいだったと思う。
轟音にも、町に広がる火の手も、彼らに降りかかるすべての厄を払った。
空が元の闇夜に戻ると、助かった人々は我が身の無事を喜び、そして村に帰っていった。
私は彼らの背中をなんとなく見つめていた。
けれど、彼らが私の方に振り向くことはなかった。
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