42人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
昨日の夕刻、雨でも無いのに髪を濡らして帰宅した私を見て、叔父は何も言わなかった。
私の父のように怒りを露わにはしなかったのだ。
柔らかな笑みを浮かべて「おかえり、悠次郎」と言っただけだった。
否、それだけではなく、叔父は私を見て何を察したのだろうか、就寝する前に私の部屋に来て、私にシュノーケリングの道具を差し出してきた。
水着を貸してくれるとも云う。
何故、分かったのだろうか。
私が湖に潜ったことを何処で知ったのだろうか。
それとも、最初から知っていたのだろうか。
叔父は、あの優しい眼差しで私の心を読んでいるようだ。
それは別に嫌な気はしないが、分かっていながら私を甘やかし過ぎでは無いかと思う。
しかし、私が叔父の恩恵に甘えず湖に潜らない理由もない。
だから、私は叔父から借りたシュノーケリングの道具を使って、今日も朝から湖の底を探索していた。
最初のコメントを投稿しよう!