12月5日

3/3

42人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
そこに光る窓は存在していた。 豪華客船に近付き、窓から中を覗き混んで私は言葉を失った。 いや、水中で声など出るわけが無いのだが。 光る窓の中には豪華な船内が広がっていた。 煌びやかなシャンデリアが、いくつも天井に吊るされていて、何かのパーティーを開催しているようだ。 真っ白なクロスが掛けられた円卓がいくつか存在し、そこには豪勢な料理が並べられていた。 私の話を聞いただけで、誰が、この情景を想像出来ると言うのだろうか? こんな嘘みたいな光景を、誰が。 息が苦しくなり、私は一度浮上した。 地上は至極乾燥しているように感じられた。 太陽の光が眩しく、湖の底とは全く違う。 彼処とは全く別の世界なのだと気付いた。 潜らなければならない。 私は、そんな衝動に駆られ、何度も潜水を繰り返した。 しかし、その窓の中の風景は変化を見せなかった。 誰一人として私に姿を見せてはくれなかったのだ。 近くから人の視線を感じたような気がしたのだが……。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加