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そこに光る窓は存在していた。
豪華客船に近付き、窓から中を覗き混んで私は言葉を失った。
いや、水中で声など出るわけが無いのだが。
光る窓の中には豪華な船内が広がっていた。
煌びやかなシャンデリアが、いくつも天井に吊るされていて、何かのパーティーを開催しているようだ。
真っ白なクロスが掛けられた円卓がいくつか存在し、そこには豪勢な料理が並べられていた。
私の話を聞いただけで、誰が、この情景を想像出来ると言うのだろうか?
こんな嘘みたいな光景を、誰が。
息が苦しくなり、私は一度浮上した。
地上は至極乾燥しているように感じられた。
太陽の光が眩しく、湖の底とは全く違う。
彼処とは全く別の世界なのだと気付いた。
潜らなければならない。
私は、そんな衝動に駆られ、何度も潜水を繰り返した。
しかし、その窓の中の風景は変化を見せなかった。
誰一人として私に姿を見せてはくれなかったのだ。
近くから人の視線を感じたような気がしたのだが……。
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