12月6日

2/3

42人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
今朝、私は再び叔父に湖底の沈没船の話をした。 呆れたのか、単なる深呼吸だったのか、叔父は一つ深い息を吐いて、私に一つの話をしてくれた。 それは二十年前、遠くの海で一隻の豪華客船が沈没した話だった。 その海はこの山の上からも見えない。 しかし、叔父の話に出てくる沈没した豪華客船は紛れもなく、あの湖の底にある船だった。 何故なら、名前が一致したからだ。 『twilight』トワイライト号 突然の嵐だったと云う。 二十年前、予測不能な嵐に遭い、その豪華客船は大勢の乗客と共に夜海の底に沈んだ。 大人、子供関係無く、あっと言う間に。 叔父は誰から、この話を聞いたのだろうか。 此処に来て一週間が経とうとしているが、あんなに真剣な表情の叔父を見たのは初めてだった。 私は微かに恐怖を覚えていたかもしれない。 それでも、私は湖に潜ることをやめられなかった。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加