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彼女と私は会話をした。
身振り手振りの気分だけの会話を。
何一つ、互いのことは分からない。
ただ、私も彼女も、それだけで充分だった。
互いの心は通じ合っているような気がしたのだ。
「また、明日」
そんな不器用な挨拶を身振り手振りでして、私は湖底を後にした。
前より私は長く潜れるようになった気がする。
ただそれだけでも進歩だ。
だが、しかし、私の中身は変わっていない。
今は、やりたいことがある。
だが、いつかは都会に帰らなければならない。
都会に戻った時、私にやりたいことはあるだろうか。
生活をしていく意味も無いまま、私は学校に行くことが出来るだろうか。
そんなことを考えながら、いつの間にか、私は眠りについていた。
叔父は私のような子供では無い。
何か用事があるのだろう。
だから、今日の夜になっても戻らず、私に姿を見せないのだ──────。
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