エピローグ

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私が布団で目を覚ました時、自宅の柱に掛けてあった日めくりカレンダーの日にちは一日だった。 十二月一日。 つまり、私は長い夢を見ていたのだ。 とても現実味を帯びた夢だった。 普通、人は見た夢を覚えていられないというのに、私は今でも、その夢を覚えている。 目覚めた朝に私は父に叔父のことを聞いてみたが、叔父は二十年前に既に他界していたことが分かった。 あの豪華客船に乗っていたのだ。 私は事故について調べなければならないと思った。 夢の話を誰かにしたいと思った。 だから、私は、目覚めたその日から学校に行くことが出来るようになったのだと思う。 学校の図書室で二十年前の事故の新聞記事を読んだ。 大きな事故だったらしく、奇跡的に記事が残っていたのである。 その記事には乗客の名簿が載っていた。 名簿の何番目かに私の叔父の名前があった。 そして、その後ろにはS・RAINという文字があった。 『RAIN』あれは彼女の名前だったのだ。 記事の最後に『広大な海の底に沈んだ豪華客船は、数日後、こつぜんと姿を消した』と書いてあったのを覚えている。
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