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「もう……あの時、あたしが見えた時点で彼女の死は確定してた。せめてキレイに逝かせてあげれば……」
「うるさいな。お前は死者を運ぶだけ。狩るのはボクの仕事だ。やり方に口出しすん……!」
少女に静かに見つめられて、ゼロはバツが悪そうに視線を逸らした。
「……お前の事、キモいって言ったから」
「それだけ?」
「それだけ」
「……やっぱり、ね」
諦めたような細いため息をカンテラに吹きかけて、少女が肩をすくめる。
「そういう極端なコトするから、ゼロは狂った愚者なんて解釈されちゃうのよ……天使のくせに」
「死を与える天使なんて、どうせ人間からすれば忌み者だ。いいから早くそれ持ってけ。また上にどやされるぞ」
「うん。じゃあ逝ってくる」
小さく言い置いて、少女がカンテラと共に宵闇に溶け込んでいく。
「……人間に肩入れしすぎる死神が主だからな。そんぐらいの狩り方と抱き合わせないと上も納得しないっつの……」
ぼやきながら、ゼロもまたこの世の闇と同化していった。
【完】
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