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「あっ……やだ、死神が正位置で出ちゃったわ……」
大学の講義も終わった、夕刻の喫茶店。
目の前の紗栄子がテーブルの上に並べられたカードを見つめ、唇を震わせている。……ざまあみろ!
「涼也くんとは別れた方がいいと思う。彼って女たらしで有名だし、やっぱり紗栄子も遊ばれてるだけなんだよ」
そうよ、アンタみたいなクソブスが涼也くんと付き合うなんておかしい。彼と釣り合うのはこの私よ。
「……だよね。愛理のタロット占い当たるから……きっとそうなんだね」
すると紗栄子は、目頭を押さえながら立ち上がった。
「ごめん愛理……帰る。コーヒー代は払っておくね……」
当たり前だ、クソブス!! 泣け、そんでさっさと別れろ!!
紗栄子が居なくなると、私は鼻歌まじりにカードをかき集めバッグにしまった。
ケルト十字法で占う、私のタロット占い。
最終結果の位置に、自分が選んだカードが必ず来るようにずいぶん工夫も練習もした。
今では自由自在に、望むカードがラストに出るようにできる。もちろん、今みたいに死神が出るようにも。
「だいたい、世の中おかしいのよね……」
小さくこぼして、周囲をぐるりと見回す。
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